データで見る日本からの大学院留学

データで見る日本からの大学院留学

~ 学位を求め旅立ったXPLANE参加者の分布 ~

「大学院留学しようと思うんだ...」

 もしこんな相談を友人から受けたら、その友人はどこへ留学しにいくとあなたは思いますか?筆者の場合、その友人の専門を問わず、おそらくアメリカへ留学するのだと考えるでしょう。しかし、分野によってはヨーロッパの方が研究が盛んな場合もあります。地理的な近さや近年の研究の勢いを考えれば、アジア各国への留学も考えられるでしょう。

    – 日本からの留学生(注1)はどこの国・地域の大学院に留学しているのでしょうか?
    – また、地域ごとに留学生の専攻分野に何か傾向はあるのでしょうか??

 このような疑問に答えるため、XPLANEのデータ解析チームでは2020 年 9月までに留学を開始した、あるいはすでに留学を終えたXPLANE Slackコミュニティ内の全 229 名のデータを解析しました。今回の記事での「留学生」とは、日本から海外の大学院の修士・博士課程に在籍する学生を指します。まず、世界各国・地域への留学人数を明らかにするとともに、留学生全体の専攻についてまとめます。次に、各地域ごとの留学生の専攻の割合について紹介します。

(注1)  ここでは便宜上、日本国籍者のみならず日本に縁のある学生を含めている。

留学生の地理的分布

全 229 名のうち、一番多い留学先は162 名でアメリカ、二番目に多いのは 31 名でイギリスでした (図1)。これ以降は、カナダ (8 名) ドイツ・スイス (それぞれ 5 名)、その他ヨーロッパ諸国 (スペイン、フランス、イタリア、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ハンガリー)、オーストラリア、中国、シンガポール、台湾と続きます。

英語圏(注2)への留学は日本人留学生の約 9 割を占めています。特に、アメリカとイギリスへの日本からの留学生は他の国への留学生よりも圧倒的に多くいます。OECDやユネスコのデータを集計した文科省によると、大学・大学院への単位を取得する留学(注3)ではアメリカ (18,573 名)に次いで中国 (14,714 名)、台湾 (8,413 名) と近隣アジア国への留学生が多いのと対照的な結果になりました。

(注2) アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、シンガポール
(注3) 交換留学などが含まれる。詳しくは文部科学省の資料を参照。

図1. 日本からの大学院留学 (作成者:高野)

留学生の専攻

 留学生の専攻を調べて見ると、 約 7 割 (169名)の学生が STEM (Science, Technology, Engineering, and Mathematics) 分野を専攻しており、次いで 人文・社会科学系が 37 名、経営・経済学系が 22 名でした。STEM 分野での留学生が多いが、日本国内の大学院でもこの分野での大学院生は、全大学院生の 6-7 割を占めています(注4)

(注4) 文部科学省の資料を参照。 

図 2. 留学生全体の専攻区分。STEMにはいわゆる理系全般 (理学、工学、医学、農学など)を全てを含めています。人文・社会科学には芸術関係、コミュニケーション関係、心理学、教育関係、政策、国際関係などを含めています。経営・経済学には市場経済や合意形成などビジネスに関連するものを含めています。(作成者:柴﨑)

各地域ごとの傾向

アメリカ
 アメリカへの留学生の約 8 割(130 名)が STEM 分野を専門にしており、この割合は全留学生での割合よりも多い(図 3、フィッシャーの正確確率検定 p=0.000500)。アメリカでも留学生の多いカリフォルニア州(37 名)やマサチューセッツ州(17 名)でSTEMを専攻する学生が多いことにこれは起因すると思われます。これらの州にはカリフォルニア大学群やスタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学などSTME分野で有名な大学があります(図4)。なお、アメリカへ留学する全日本人留学生 (短期留学や学部留学を含む)では、STEM分野専攻の学生は 16.8 %とここまで多くない(注5)。この点から、アメリカへの大学院留学は特にSTEM 分野の学生を惹きつけていると言えるでしょう。

(注5) こちらを参照。

図 3. アメリカにおける留学生の地理的分布(作成者:高野)
図 4. アメリカにおける留学生の専攻区分 (作成者:柴﨑)

イギリス
 イギリスへの留学生は人文社会科学分野への留学生が 16 名と半数を占め、全留学生の専攻区分とは異なった傾向を示した (図 5、フィッシャーの正確確率検定 p=0.000102)。ただし、特定の大学院やより細かい特定の専門分野での留学生が多いといった傾向は見て取れなかった。

その他の地域
 その他の地域 (大陸側のヨーロッパ諸国、カナダ、オーストラリア、シンガポール、中国、台湾) でも、留学生の各専門の割合は世界全体での差と有意差ありませんでした (図6、フィッシャーの正確確率検定 p=0.923)。

 留学生の人数が多いのは、英語圏であるカナダ(8 名)やノーベル賞受賞者を数多く輩出しているマックスプランク研究所が有名なドイツ(5 名)、非英語圏ながらTHE世界大学ランキングの上位に入る連邦工科大学を擁するスイス(5 名)でした。日本から近い中国や台湾、あるいは英語圏であるオーストラリアやシンガポールへの留学生はそれぞれ 1~2 名と少ない結果でした。

図 5. イギリスにおける留学生の専攻区分(作成者:柴﨑)
図 6. その他の地域における留学生の専攻区分(作成者:柴﨑)

まとめ

 今回はXPLANE Slackコミュニティ内の留学生のデータから、日本からの留学生はどこの国・地域の大学院に何を研究しに行っているのかを調べました。全体では、STEM分野での大学院留学生が多いですが、これは国内大学院進学率と同じ傾向です。地域ごとに見てみると、アメリカへの留学生の大多数がSTEM分野を専攻しているのに対して、イギリスへは人文社会学系への留学生が半数を占めていました。また、非英語圏 (大陸側ヨーロッパや東アジア各国) への留学生もおよそ1割いることが分かりました。

注釈:本記事にある統計結果はあくまでXPLANE slackコミュニティ参加者のデータを解析したものであり、実際の海外大学院日本人留学生数・留学状況を反映するものではありません。

今後もXPLANEでは海外大学院に出願予定の受験生の方々を対象としたイベントやワークショップなどを開催していく予定です。今後の情報は、XPLANEのslackTwitterなどからチェックしてみてください

執筆者プロフィール
Shota Shibasakiローザンヌ大学博士課程在籍
専門は数理生物学
仏語に苦戦中
Yohei Takanoジョージア工科大学博士課程修了
専門は海洋学
様々な料理に挑戦中