人生逆転-トップスクールの大学院に合格するためには【海外大学院受験記2021-#7】

XPLANE連載企画「海外大学院受験記2021」では、今年度海外大学院への出願を終えたばかりの方の最新の体験を共有していただいています。第7回の今回は、この秋から米国カリフォルニア州のUniversity of California, Berkeleyの機械工学専攻の博士課程に進学予定のShingoさんに寄稿していただきました。

brainchildvn on Flickr, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

2021年秋よりカリフォルニア大学バークレー校PhD課程 (Mechanical Engineering, Biomechanical Engineering) に進学予定のShingo Tsukamotoです。私は、工学と物理学の知識を用い生命現象及び免疫応答メカニズムの解明を目的とするMechanobiologyやMechanomedicineという複合分野の研究を行っています。

本記事では、周りに海外大学院進学の先輩もおらず学部GPAも高くないような状況からでも世界トップレベルの大学院に合格するための戦略を、シンガポール (A*STAR)、イギリス (University College London),アメリカ (University of California, Berkley)にて研究インターンを行い、三か国のPh.D.プログラムに出願した筆者の立場から考えたいと思います。

目次

1. 大学院留学を志した理由・きっかけ

海外博士課程進学を決意したきっかけは、シンガポールに留学した際にその研究環境の違いにショックを受けたことに由縁します。設備は勿論、私の所属していたシンガポール科学技術研究庁には毎週のように世界各国から訪れた研究者によるセミナーが開かれ、そこで共同研究が生まれ急速に研究が発展していく様を目の当たりにしました。 特に私のような新領域複合分野の研究を行う者にとっては、如何に世界の各分野のスペシャリストたちと研究を促進していけるかがカギとなります。故に、博士課程のタイミングで海外の大学に属し、世界中の研究者と協力し進めていける能力とコネクションを作りたいと思い海外大学院出願を決意しました。

2. 合格の為に必要なこと・各国のPhD(DPhil)の特徴

2.1. アメリカ

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アメリカのPhD課程への出願に関しては,多くの方がブログで執筆しており大変よくまとめられています。

合格に必要な事としてHayato Nakamuraさんのブログより引用したいと思います。

「推薦状 > コネクション >> Statement of Purpose = 研究 = GPA >> TOEFL > GRE」

日本で修士課程を修了してから行く場合は、推薦状の良し悪しは研究成果と関わってくると思うので、修士卒の場合は個人的には
「推薦状 = 研究実績,コネクション >> Statement of Purpose,GPA > TOEFL > (GRE)」
としたいと思います。

コネクションに関して、日本の“コネ”の印象と少し異なるので補足しておくと、元々教授同士が知り合いとかそういった話ではなく、出願前に出願先教授へ自分の売り込みを成功させているかどうか、だと思います。基本的にトップスクールになると倍率も非常に高く、皆優秀なのが当たり前な状態なので、予め教授にアピールしておかないと埋もれてしまう可能性があります。そういった意味でのコネクションだと私は認識しています。

私の場合は、出願先研究室にインターンを行い、研究成果を出し、そこで活躍できることをあらかじめ証明しました。すでに出願先研究室で優れた研究成果を出している学生であれば、どんなトップスクールであれ入学を断る可能性は低いと考えていました。インターンを行う方法としては、トビタテ!留学JAPAN等の奨学金等を獲得すれば受け入れてくれる可能性は大いに高くなると思います。インターンできない場合でも、研究室訪問(オンライン含む)等でしっかりと教授に自分の実力と可能性を売り込めていればオッケーです。

Statement of Purposeに関しては、出願先研究室の友人らに添削をお願いしました。海外の学生と繋がりが無い場合はXPLANEさんのSoP執筆支援への参加をお勧めします。

GPAはバークレーのMechanical Engineeringの場合、学部のものしか見られず私は3.4でした。3.8以上でなければトップスクールは受からないと言う人もいますが、上記に挙げた観点に基づいて総合的に判断されるので挽回は十分可能です。

2.2. イギリス

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イギリスに関しては、複雑です。正直、大学や分野、希望研究室の教授の財政状況によるので一概にまとめられないと思います。本記事では「自国で奨学金を獲得」、「大学の奨学金付プログラム」、「教授がお金を持っている場合」の3パターンに分け述べたいと思います。

2.2.1 自国で奨学金獲得

私が受験を考えていたオックスフォード大学とUniversity College London (UCL) の研究室の場合はこのパターンでした。博士期間は3年間です。この場合、合格に必要なものは

「奨学金獲得 > コネクション > 研究実績 = 推薦状 > Statement of Purpose, GPA > IELTS」

という印象でした。私はインターン中にオックスフォードとUCLの研究室訪問を行い、受験の年(2020年)の5月頃に具体的な研究計画の提案をしていて、「ぜひその研究をやりたい、来て欲しい」と言われていました。しかしながら、奨学金の獲得が条件でした。なぜならばInternational studentsに対しては学費や生活費の全額支援が難しいケースが多い*1からです。また、自費で賄える余裕があったとしても合格が難しいと言われているため、大学側が自国で奨学金を獲得できるかどうかを学生の能力判断の指標としているのかもしれません。

自国で奨学金を獲得してくる場合は、特に締切等もなくいつでも出願できるそうでした。ですので、私はJASSO海外大学院奨学金から合格を頂いた2021年3月に再度コンタクトを取りました。奨学金獲得のメールをした当日にZoomミーティングを早速行ったところ、第一志望で出願するのであれば次週にすぐ面接 (他の教授と行う正式なもの) を設定すると言われ、奨学金獲得後の話の進む早さに驚きました。結局、カリフォルニア大学バークレー校に進学する事にしたので出願しなかったのですが、教授からは「勿論100%の約束はできないけど、問題なく受かるだろう」と言われていたので奨学金獲得が何よりのポイントだったようです。

2.2.2 大学の奨学金付プログラム

私が出願したプログラムに関しては、学部ごとの奨学金付プログラムもあることにはあります。というのも、以前はこれらのプログラムはEU圏内の学生しか出願資格がありませんでした。EUを離脱した事により一応日本からでも申込できるようにはなりましたが、「international studentsが合格することはほぼ無理だろう」と教授から言われました。そして私もダメもとで出願してみましたが見事に書類で落とされました。

ただ、これも学科や大学によりさまざまかもしれないのでぜひ出願先教授に確認してみてください。

2.2.3 教授がお金を持っている場合

研究テーマについて柔軟に考えている方には,お金を持っている先生を探し出願する方法もあります。例えば、FindAPhDなどのサイトではプロジェクトベースで募集している場合があります。教授が募集したタイミングが全てだと思うので、こちらはかなり運によるかなと感じます。志望先研究室の教授がinternational student用にも出せるお金を持っている場合もあるので、聞いてみてください。

2.3. シンガポール

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シンガポール全般に言えることは研究環境がとても良いです。おそらくどのPh.D.プログラムに入ろうが十分量の奨学金を貰え研究に集中できる環境が整っています。合格に必要なものは 「コネクション > 推薦状 = 研究実績 > Statement of Purpose = GPA >> TOEFL > (GRE)」 という印象でした。私の出願したシンガポール科学技術研究庁のPh.D.奨学金プログラムSINGAは、合格率(acceptance rate)が3%とアメリカのトップスクール以上の激戦だったので、なおさらコネクション、教授への事前コンタクトが重要だと思いました。 日本、イギリス、アメリカ、シンガポールの中で一番研究環境が優れているのはシンガポールだと個人的には感じたので、シンガポールのPh.D.はあまり日本では知られていないですがぜひお勧めしたいです。

結局、私の受験成績としては

・カリフォルニア大学バークレー校 - 合格
・オックスフォード大学 (奨学金付プログラム) - 書類落ち
・シンガポール科学技術研究庁 SINGA - 最終面接後辞退

でした。

3. 出願・申請書作成に関して

3.1. 奨学金申請・Statement of Purpose (SoP)

奨学金に関しては、志望先の先生方が大変協力的で、まず英語で研究計画を書き添削して頂きました。その後日本語に直し、奨学金を獲得されていた先輩方にご指導頂きました。SoPに関しては、出願先のサイトをよく読み求められていることを理解し構成を考えました。その後、インターンをしていたこともあり出願先にPh.D.課程在学中の友人達がいたので彼らに添削して貰いました。

この二点に関しては他者からのフィードバックが重要になってくると思うので、海外の学生と繋がりが無く困っているという方はXPLANEさんのSoPメンターシッププログラムが素晴らしいのでぜひ参加してみてください。奨学金、SoPに関しては、バークレーの友人に言われたこの言葉が全てだと思います。

“MAKE IT IMPOSSIBLE FOR THEM TO SAY NO TO YOU BY SHOWING THEM THAT YOU CAN PERFORM RESEARCH AT A HIGH LEVEL AND THAT YOUR GOALS ALIGN WITH THEIRS.”

3.2. 英語

英語試験(IELTS)に関して対策としては、ざっとまず日本語の参考書を読みテストの大枠を理解し、その後インターネットで検索するとテスト教材がたくさん見つかったのでそれを解きました。Writingと Speakingに関しては添削してくれる先生が必要になると思います。私はDMM英会話で良い先生を見つけその先生に添削して貰いました。英語に関しては足切りにしか見られないようだったので,出願先大学の足切りに設定されているIELTS7.0で出願しました 受験の年には出願や修論 (卒業) 研究など他のやるべきことも多く、英語の勉強時間が確保できないかもしれません。海外大学院受験者の多くの方が仰っているように英語スコアに関しては早めにクリアしておくことを強くお勧めします。

3.3. 推薦状

推薦状は、所属している東京都立大学の研究室の先生、インターン先のカリフォルニア大学バークレー校の先生、シンガポール科学技術研究庁の先生にお願いしました。効果的な推薦状の依頼方法*2については、米国大学院学生会のニュースレターかけはし2018年夏特別号第六章に大変詳しく掲載されていますのでご覧ください。

4. 海外大学院受験の反省

私がもっとこうすれば良かったと感じた点は、選択肢を広く持つことです。奨学金にしても大学院にしても3つ程度しか出願をしませんでした。

あまりにも無駄に多く出す必要はありませんが、少なくとも5個ぐらい出願し選択肢は多く持っておいた方が良いと感じました。実際に具体的な話を進めていく中で志望順位が変わることも往々にしてあると思います。受験の基本かもしれませんが選択肢を狭めすぎず、ある程度は広く見た方がよりよい進路を選択できるのではないかと思いました。

良かった点は、事前に教授に売り込みをしっかりできた事です。教授の論文を読み、自分の技術を合わせることによってどんな可能性があるか明示しました。初コンタクトのメールでも、単にPh.D.に出願したいというだけではなく、必ずここまで含めメールを送っていました。交渉事の基本かもしれませんが相手の興味を把握し、どんなメリットを与えることができるかを常に意識していたことは良かったと思います。

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5. 今後海外大学院を出願する人へのメッセージ

学位取得を目的とした留学準備は、労力もストレスも普通のインターン等の留学とは大きく異なります。ですが、その過程を通して得られる能力は貴重で私はこの海外大学院受験を通して大きく成長できたと感じています。今現在、GPAも高くない、研究実績もない、海外とのコネクションもない、何もない状態でも戦略をしっかり立て準備を行えば理想の大学に行ける可能性は大いにあります!振り返ると、何もなかった自分が海外大学院という遥か遠い目標に向けて様々な方々と出会いご協力頂きながら歩んでこられたこの2, 3年間はとても充実し楽しかったです。皆さんにとってもワクワクするような受験生活になることを祈っています!

Twitter:

@shinGO_2525 (https://twitter.com/shinGO_2525)

留学経験について(トビタテ公式YouTube):

https://www.youtube.com/watch?v=b8HzRHtfbdE

(編注)

*1 出願するプログラム、分野、研究室の経済状況等によって異なります。
*2 XPLANEのホームページでも、推薦状について詳しく紹介しています。http://xplane.jp/application-prep/reference-letter/
 
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