推薦状

推薦状

1. 推薦状とは??

海外大学院に出願する際には推薦状が必要になります。Recommendation Letter Reference Letterと呼ばれるこの推薦状では、出願者のことを良く知る人物数名 (米国大学院への出願では通常3通(以上)、ヨーロッパでは2通のことも) が出願者について「太鼓判を押す」ことになります。直接自分で準備をする書類では無いので、海外大学院を目指し始めた人にとっては最も不安に思う出願書類の一つかもしれません。しかしながら、推薦状は出願に必要な全ての書類の中で1, 2を争うと言っても過言ではない非常に重要な書類です。

出願者を選抜する大学院側にとって、推薦状から得られる同じ研究分野の研究者による出願者についての客観的な評価と情報は非常に重宝します。良い推薦状とは、出願者の研究能力のみならず研究に対する情熱や 、研究姿勢や他人とのコミュニケーション (work ethics/soft skills) を踏まえて実際に志望する大学院に入って成功できるか否かを、具体例を交えながら説明します。学生は基本的には推薦状の中身を見ることはできないため*、推薦者は褒めちぎるだけではなく欠点などを踏まえて率直に記述した推薦状を書くことができます。SOP(エッセイ)やCVを含めたほとんどの書類は出願者の長所を強調する場所のため、信頼のおける第三者によって書かれたフェアな推薦状は出願者の実際の能力や人間性を知る道具として役立ちます。

* 多くの大学院で、出願の手続きの中で推薦状をみる権利を放棄するか?という質問で yesと答えない限り出願できない仕組みになっています。これは、学生が推薦状を見ることができると推薦者が忖度して正しい評価を下せなくなってしまうからです。

2. 推薦状の内容

1994年にノーベル経済学賞を受賞した John Nash がプリンストン大学大学院に出願した際、指導していた Richard Duffin 教授は ‘He is a mathematical genius.’ とだけ書いた推薦状を提出したそうです。Nashほどの天才ならこれでいいのかも知れませんが、通常の場合これは最悪の推薦状の一例と言ってよいでしょう。

というのも、推薦状ではとにかく具体例を用いて説得力を増した上で出願者を推薦することが必要だからです。ではどのような内容が推薦状に書いてあればいいのでしょうか?

John Nashへの推薦状

一般的に、良い推薦状は以下の条件を満たしているものと言えます。

    • 出願者の研究能力とその将来性について具体的かつ客観的に説明している
    • 出願者の長所と短所どちらも説明している
    • 志望する大学院で成功するか否かを理由を持って説明できる

 

また、良い推薦状は以下の条件を満たしている推薦者が書いたものです。

    • 出願者のことを高く評価している
    • 出願者との関わりが短くない (1年以上)
    • 出願者を実際に指導したか、一緒に働いたことがある
    • 博士号を有している
    • 出願する大学院に共同研究者か直接の知り合いがいる
    • 海外大学院で学位を取得している
    • 出願分野で著名である
    • 海外大学院の審査に関わったことがある

 

太字の部分は一般的に必要と言われている条件で、残りの部分は必須ではないがあるとプラスに働くという項目です。大学によっては、推薦状の内容が指定される場合もあります。上記のリストにあるように、推薦状の内容に加えていかに推薦する人自体も重要だということが理解できると思います。適切な人に推薦状を書いてもらえば出願する上でこの上ない武器になるでしょう。

3. 推薦状を誰に頼むべきか?

では、誰に推薦状を書いてもらうのがベストなのでしょうか?日本で一般的な大学/大学院生活を送っていると、比較的長時間接する教員は卒業論文・修士論文の指導教官のみになることがほとんどだと思います。となれば、三枚もの「強力な推薦状 = 出願者のことをよく知る人からの具体的な推薦文」を揃えることは至難の技です。

推薦状を誰に依頼するのか、計画を立てるのに早すぎるということはありません。学部1-2年生の場合、卒論などで実際に研究室配属が始まるのを待たずに積極的に研究の機会を求めることから始めましょう。大学後半あるいはすでに大学院修士課程に入っていて出願まであまり時間が無い場合でも、ここからの工夫次第で強力な推薦状を得ることは可能です。

例えば、自分の興味のある分野に近い科目の講義があるとしましょう。その授業で際立った成績を残すことで、教授から推薦文を書いてもらえる可能性があります。ただし注意しなければならないのが、授業を受けて優(=A)を取るだけでは意味がないということです。推薦状には出願者が際立って優れた学生だったことを具体的に書けないと意味がないため、その講義で以下の例のように際立っていることが理想的です:

1) 試験で他の学生と比較して圧倒的な成績で一位だった
2) クラスで誰も解けなかった問題を解いた
3) 誰よりも多く鋭い質問をし、教室内の議論に貢献した
4) 英語力を発揮して誰よりも明快に最終発表をした

良い推薦状を手に入れるために、興味のある授業を取ってそこで頑張る理由はそれに留まりません。まだ卒論/修論プロジェクトが始まっていなかったり、時間に余裕があると感じた場合は、迷わずその授業を教えている教授に研究の機会がないか聞いてみましょう。どんな先生でも、熱心に自分の授業を受けた学生から自分の研究室に入って研究したいという姿勢を見せられると嬉しいはずです。そうして得た研究の実績のみならず自発的に研究機会を掴み取る姿勢も、強力な推薦理由として書くことができます。

基本的には大学が推薦者の条件を指定することはありません(注:ただし場合によっては推薦者にPh.D.が必要なことも)。指導教員、インターン先のメンター、受講した講義の教授と様々ですし、その組み合わせに正解もありません。参考までに、以下に実際に米国大学院に合格した約100人が出願時にどのような人物に推薦状を依頼したかをグラフにまとめました。

上のグラフにあるように、アンケートの回答者93人中全員が出身校の指導教員から1枚推薦状をもらっています。そして共同研究者、インターン先のメンター、大学院以前に留学した際の指導教員から推薦状をもらうというケースが続きます。

さらに細かく分けていくと、推薦者のうち、米国PhD取得者がいた割合が回答者の過半数を占めるという結果がみえてきました。大学院出願に推薦状が必要という海外特有の文化に理解がある人に依頼する傾向があるのかもしれません。あるいは、海外大学院でPhDを取った人物だからこそ、どんな推薦状を書けば効果的か理解しているということもあると思います。

最後に、ある日本人留学生が具体的にどんな三人(又は四人)を選んだか、いくつか例を見てみましょう。一つ一つの推薦状が具体的であるだけでなく、推薦する学生の異なる側面について書けるように、多様な視点を描ける推薦者の組み合わせを考えることも非常に重要になります。このデータを自分が出願する際に誰に推薦状を依頼するか考える際の助けにしてください!

学部を日本、修士をアメリカで取得した学生の場合
推薦者1234
関係修士時の指導教官修士時の副指導教官講義を2つ受講 & Research Assistantを半年間学部時のインターン先の教授
知り合ってからの年数2年1.5年1.5年2.5年
所属USA台湾USA日本
博士号取得国USAUSAUSA日本
実績若手、分野の第一人者若手、分野の第一人者分野で世界的に有名な大御所若手、分野の第一人者
自分と推薦者の分野との近さ近い周辺分野周辺分野異なる分野
学部、修士共に日本で取得した学生の場合
推薦者123
関係修士時の指導教官学部時の指導教官同専攻・同分野の教授
知り合ってからの年数1.5年2.5年1.5年
所属日本日本日本
博士号取得国日本日本日本
実績分野の第一人者若手、分野の第一人者分野で世界的に有名な大御所
自分と推薦者の分野との近さ近い異なる分野周辺分野

4. 推薦状を書く方へのガイドライン

ここでは、実際に推薦状を書く立場(以下、推薦者)になった際、どのようなことに気を付けるべきか紹介したいと思います。推薦状は、出願資料において他人が提供する唯一の書類であり、周囲からどのように評価されているのか知るという点で重いウェイトを占めます。故に、戦略的に推薦状を書くことが非常に重要になってきます。そのため、推薦者は出願者と情報共有をすることが重要です。最終的にどのような内容を記載するかは推薦者の自由ですが、「出願者が応募する学校、分野、研究室」、「他の推薦者」、「内容の要望」などを事前に共有できると推薦状のイメージが湧きやすくなるかと思います。

出願者の志望校を直接知っていたり個人的な知り合いがいることは推薦状を書く上で大きなアドバンテージになります。同じ研究コミュニティの知人から「あなたの研究室にピッタリな人材がいる」との一筆があれば合格率が一気に増すでしょう。また、「他の推薦者」、「内容の要望」を聞くことで、自分の推薦状に求められている視点を理解することができます。例えば同じ研究室から助教と教授が推薦状を書く場合、内容の役割分担をすることも可能です。近くで研究している姿を見ていた助教は仕事のしやすさ、普段からの研究姿勢、コミュニケーション能力などについて具体的に言及できる一方、教授の視点からはプロジェクトへの貢献度、自分の経験を通しての研究者としての素養などについて言及することができます。

次に、推薦状の内容について説明したいと思います。博士課程の多くの場合一度学生を受け入れるとその学生の授業料、生活費、研究費を数年間負担することになります。これは決して安い投資ではなく、入学時点で本当に学位を取得する素養があるのか、大学とマッチするのかといったことを探るためにも推薦状から得られる情報は非常に重要です。

評価する側が具体的に求めているものの例として、「研究能力、アイデア力、理解力、成長・吸収率、勉学の能力、忍耐力、コミュニケーション能力、仕事の効率、プレゼンテーション能力、文章力、英語力、人間力」などが挙げられます。大学によってカラーがあり、求められる能力が異なることも考慮できるとよいかもしれません。小さな研究系大学では、フィット感、コミュニケーション能力が重視されるのに対し、大きな総合大学では個人で研究を進める能力などが重要視されることがあります。推薦状では、これらの能力のうち、出願者がどこで、どのように秀でているのか書くことが重要となります。また、それを通して、間接的に研究者として成功することを示唆すると良いでしょう。

例えば、「AさんはXX学会で講演賞を受賞したことからもわかるように、プレゼンテーションが非常に上手い生徒だった」ではなく「Aさんはメッセージを明らかにし、それを効果的に伝えることを常に心掛けていた。彼女が作るスライドには常にメッセージが明確に記されており、それを示すデータ加工にも工夫がちりばめられていた。XX学会で、Yに関するテーマを発表した際、彼女は煩雑なZに関するデータを上手く切り分けて伝えていた。結果的に彼女はこの学会で講演賞も受賞した。」と解像度を上げて伝えられるとよいでしょう。また、推薦状では受験校が具体的な情報を求めてくることがあります。よくある例として、「自分が見た生徒のうち上位何パーセントの生徒ですか?」というものがあります。その際にはしっかりと具体的にその質問に答えるようにしましょう。

最後に、書き終わった文章は見直した後に英文校閲を行いましょう。推薦状やエッセイなど、文法やタイピングに誤りがある場合、英文を正しくチェックする労力を費やすほどの価値がこの推薦状には無い(=それほど重要な生徒ではない)、もしくは英語の教養がない研究者(=アメリカのPh.D.の仕組みに明るくない)とみなされ、いずれも出願者に不利に働いてしまいます。

ここでは、推薦状に関して推薦者と出願者の両方の視点から解説していきました。推薦状が出願書類の中で重要なファクターとなることを理解し、余裕を持って強力な推薦状を用意しましょう!